署長時代に、組織犯罪対策室の所属長として退職されたOBが訪ねてきて、一頻り、話しをしたのですが、彼曰く、「署長には、いつも叱られていましたよね。」と懐かしそうに話しを続けてきました。
捜査第二課で、特捜班長として勤務していたときに、郵便局におけるダイレクトメールを利用した贈収賄事件を手掛けていました。
贈収賄事件を立件するためのツールのひとつとして、「対価性」というものがあります。
平たくいうと100万円しか儲けがないのに、賄賂を100万円渡したというのであれば、それは「賄賂」では無くて、他の趣旨があるのではないかということになります。
つまり、「賄賂」では無くて、「投資」であったり、「債務」であったり、「貸借」や「譲渡」かもしれませんので、「賄賂」というための「対価性」の立証が必要となってきます。
「賄賂」の「額」だけではなく、ダイレクトメールの場合、郵便物を通常より、安く引き受けてもらうために、郵便局員に賄賂を渡すわけですが、この通常の郵便料金より安く引き受けられたということを立証することも必要となってきます。
当時は、ダイレクトメール業者が、一回で、様々な形態の郵便物を持ち込んでおり、引き受けた郵便局員も、いちいち値段を出すのが面倒なので、ダイレクトメールが入った箱ひとつの軽量をして、まとめて郵便料金を算定していました。
なぜ面倒なのかというと、大きさや重さで郵便料金は変わるのですが、「料金別納郵便物」であるダイレクトメールは、集配局に持ち込んだり、バーコードがついていたりすると最大で45パーセントの郵便料金を割り引く制度がありましたので、郵便局員は、持ち込まれた郵便物の通数を数えることも、割引もすることなく、郵便物が入った箱を量りに載せて、郵便料金を決めていたのです。
ですので、持ち込まれた郵便物の郵便料金の総額とした量りに載せて受け取った料金が正規の料金より高いのであれば、「賄賂」の「対価性」や「趣旨」がぼけてくることはもちろん、詐欺などの別の犯罪を構成することとなりますので、持ち込まれた郵便物の正規の料金を出す必要があったのです。
続きます。



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