贈収賄事件の端緒を取得してからの捜査で重要なのは、「職務権限捜査」「被疑者の取調べ」です。
情報が無ければ、捜査は出来ませんし、贈収賄事件の客観的証拠が乏しいわけですから、授受した者が賄賂であることを認定するために重要な捜査となります。
「取調べ」では、被疑者の内心と賄賂であることの供述を引き出すわけですが、授受があったからと言って、それは単なる譲渡であったり、貸借や相続、あるいは債権債務であるかも知れませんし、取調べによって、賄賂と認められないこともあります。
「職務権限」というのは、公務員に賄賂を渡すには、それなりの理由があるわけで、例えば、許可に便宜を図る部署で決裁権限を持っていたりすると職務権限があるということになるのです。
法律に記載されているものは、総括的あるいは抽象的な権限ですから、「具体的」に、個別な権限を特定する必要がありますし、それが無ければ、贈収賄事件として問擬することは出来ません。
この具体的な職務権限を公務員が属する組織に供述させなければならず、大きな組織や防衛力が強い組織であれば、徹底的に組織で対抗してきますので、出頭はおろか、供述を引き出すことは、その組織自体を知ることと相俟って、非常に困難な仕事となります。
私自身は、組織が大きければ大きいほど、強ければ強いほど、頭がさえてくるタイプでしたので、組織を法的に読み込むこととその職務を法に結び付けて考えることに加え、組織の人間を取調べることを得意としていました。
出頭を拒否する国会議員の公設秘書を呼び出して、自認に転じるまで取調べをしたり、収賄被疑者は徹底否認して、後に最高裁で争うまでの事件となった贈賄被疑者の取調べをして、供述を引き出し、収賄被疑者が完全黙秘しても有罪を勝ち取ったこともあります。
捜査員にも得手不得手というものがありますので、指揮官としては、それを理解しながら、捜査員をそれぞれの職務に当てていくことも肝要です。
警部となって、特捜班長時代は、協力者に接触して情報を得るという機会も少なくなったことや捜査員時代に端緒取得に苦労したこともあり、所謂「事件を転がす」という手法で、情報を取得するようになりました。
証拠品を分析したり、取調べた被疑者から情報を得るのはもちろんのことですが、一般事件から選挙違反事件へ、選挙違反事件から贈収賄事件へ、贈収賄事件から選挙違反事件へという情報の取り方を行い、捜査員にも情報を取得させるようにしたのです。



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