Eva(公益財団法人動物環境・福祉協会Eva)

ジレンマⅡ

取調べ

 また、あるときは、法定外文書違反事件の被疑者として、政党党首の女性私設秘書を取調べるように班長から下命を受けました。

 このときも、別の事件の情報収集にあたっていたのですが、いきなり、呼び出されて「被疑者を呼び出して取調べろ。」という下命でした。

 「出来ません。」という言葉はありませんので、自分で被疑者に電話をかけて任意出頭を促しました。しかしながら、女性特有の体調不良という理由で、数日、任意出頭に応じることはなかったのですが、出頭を促せないことをいろいろと詰られました。

 被疑者の身上を調べる余裕もない中で、取調べを下命され、かつ、帳場が行うべきであろう任意出頭までもやらされているのに本当に使い勝手が良いというのか、捨て駒なのか、「よく使われるな。」と心の中で思っていました。

 何とか数日後に被疑者は任意出頭に応じたものの、もちろん選挙違反については頑なに否認するのですが、被疑者は生来、正義感の強い女性であったことから、結果的には法定外文書頒布の事実を認めて、略式罰金に応じました。

 彼女は、出身大学の教授であり、恩師であった政党の党首の私設秘書という立場にあったのですが、罰金を納付したということは、それなりのことは党首に報告していたと思います。

 彼女は私より年上でしたので、当時は30代でしたが、数か月後には故郷である北陸に帰ったと人づてに聞きました。きっと私から取調べを受けて、違反事実を詳細に供述することは、連座制の適用はないものの、政党自体が選挙違反にかかわったことを供述しているのとおなじですから、党首からも厳しく詰られたと思いますし、供述する「正義」と党首に対する「情」の板挟みになって相当苦しんだのだと思います。

 その政党も無くなってしまい、一人の人生を台無しにするような取調べをしなければならないということを身に染みて感じ、中途半端な気持ちではなく、相当の覚悟を持って取調べをしなければならないということを身をもって知らされたときでもありました。

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