被疑者を任意に署に連れてくるときに「被疑者の任意同行について」という捜査報告書をよくみかけました。
報告書を作成する目的は「被疑者が強制ではなく任意に署に出てきた。」ということを疎明するためであり、被疑者が捜査用車両やパトカーに自ら乗り込んで応じたと記載していると思いますし、指導もされていると思います。
しかしながら、被疑者の「任意同行」などはあり得ません。被疑者であれば「任意出頭」となるのです。
警察官職務執行法第2条2項には、職務質問をその場ですることが「本人に不利である」「交通の妨害となる」と認められる場合においては、質問をするため「付近の警察署、派出所または駐在所」に同行することを求めることが出来る旨記載されています。
その対象は、同法第2条1項に、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して「何らかの犯罪を犯し、犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」か「既に行われた犯罪について、犯罪が行われようとしていうることについて、知っていると認められる者」と規定されています。
つまり、警察官職務執行法に規定されている同行を「任意同行」と言い、その客体は「被疑者」ではありません。被疑者の「任意出頭」は、刑事訴訟法第198条に基づくものであって、行政法である警察官職務執行法とは異なるのです。
また、犯罪を目撃したという者(参考人)などに協力を求める場合で、来署してもらうのは、刑事訴訟法第197条1項が法的根拠となり、「捜査については、その目的を達するために必要な取調べをおこなうことができる」と規定されています。
交番に任意同行した者をさらに署に任意同行することは出来ませんので、交番での職務質問によって被疑者としての嫌疑が生じたのであれば、署には「任意出頭」を求めることなります。ですので、「被疑者の任意同行について」と記載するのではなく「被疑者の任意出頭について」という報告書を記載しなければなりません。



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