当時の初級幹部専門課程への入校は本部申告であり、横領での捜索を実施するまで他の事件があったこともあり、本部申告当日に捜索をすることになったもので、私はその捜索には参加できませんでした。
本部で申告をしているとポケベル(当時は携帯電話はありませんでした。)が何度も鳴るものの、申告や入校における心得などの指導の最中でしたので、正午になってから署に電話すると刑事課長から「捜索で真正けん銃が出て、ダブル執行した。関係先を捜索するので報告書を書いてくれ。」というものでした。
その夜には、管区警察学校に入校しなければならないので、申告が終われば、その足で向かう予定を変更して、荷物を持ったまま、署に戻ってから、関係先の捜索を行うための捜査報告書を書き始めたのです。
しかしながら、事件や関係先を知っているのは私だけですから、被疑者の交際中の女性宅や勤め先あるいは被疑者の勤め先等の関係先の報告書を何通も書いていると夕方を回ってしまい、午後8時には管区警察学校に入っていなければならず、這う這うの体で捜査報告書を仕上げて、何とか入校には間に合いました。
翌日、またしても私が参加しない捜索が、本部と合同で行われましたが、捜索先はもぬけの殻で、マメが数発あったのとこれ見よがしに警察官の名刺が置かれていたようでした。
その後の捜査で、レンタカーを横領した男とコンタクトレンズを落としたとして3万円を得た男は、いずれも把握はされていませんでしたが、今でいう指定広域暴力団直系の組員で、勤め先は自動車販売会社を装ってはいたものの、進出してきた暴力団の組事務所となっていたものと判明しました。
横領で逮捕された男は、求令の上、詐欺と銃刀法違反等で起訴され、コンタクトレンズを落としたとしていた男も詐欺で逮捕起訴されました。
捜索で押収したけん銃については、真正けん銃であり、最初から関係先をすべて捜索していたならば、複数のけん銃を押収出来た可能性はありましたが、私一人で捜査していたことと逮捕状などの請求を急いだばかりに少し失敗した事案でもありました。
そのせいか、けん銃を押収した端緒を取得しても「刑事なら当たり前」という理由で表彰されることもありませんでした。



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