三年ぶりの近畿柔道高段者大会に出させていただきました。怪我をすることもなく帰って来ましたので、このような文章を打っています。
さて、二度目の署長として勤務していたある日、区役所内の椅子の上に置いていた鞄を窃取された被害者が区役所内を探していたところ、身障者用トイレの中から男が出てきたので、被害者がトイレの中を確認すると被害品である鞄があり、男を詰問して警察官の臨場を求めたという事案がありました。
男は、地域警察官の職務質問によって、窃取された鞄に在中していたカードなどを所持していることが判明し、刑事課員も臨場していたのですが、時間が経ていることや被害品である鞄の発見場所も異なっていることから「占有離脱物横領」の可能性もあり、処理を躊躇しているときに報告が上がってきました。
窃盗罪で緊急逮捕するように下命したのですが、男は病院に行くと現場を離れており、緊急逮捕したのは数時間後となりました。現場警察官の判断を迷わせたのは緊急逮捕の要件である「長期三年以上の懲役若しくは禁固にあたる罪」であったと思います。
この事案で問題なのは、男が犯した罪を「占有離脱物横領」と判断するのか、「窃盗の否認」と判断するかですが、窃盗を犯したことの充分な理由があれば緊急逮捕することには何ら問題はありません。
この事案の場合は「被害品を所持」しており、近接する現場でもあるので、「十分な理由」であり、逮捕による罪で起訴されなくても逮捕が違法となることはありません。
このような逮捕の要件については、初任科を含めて幾度となく教養されていますから、「占有離脱物横領」の法定刑である「一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料」という要件にとらわれ過ぎて現場での判断を間違うことになってしまいます。
それ以上に問題と考えなければならないのは、現場にいる被害者をはじめとして、区役所を訪ねてきている一般人がたくさんいるということです。衆目に晒されており、現場を離れようとする被疑者を前にして何もできない警察官を見て彼らはどう思うでしょうか。
府民にとっては中途半端な知識などは必要とされていませんし、「強い警察」を期待していると思います。その信頼を失うのは一瞬です。強大な権限を有しているからこそ、府民は警察に期待しているのであって、ときには叱責として返ってくることを肝に銘じておかなければなりません。



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