Eva(公益財団法人動物環境・福祉協会Eva)

生きて帰る

思い

 お盆だからなのかもしれません。ご先祖様にきゅうりの馬を供えるのは「早く帰って来てほしい。」、ナスの牛を供えるのは「ゆっくり帰ってほしい。」という思いからです。

 娘さんが警察官に嫁ぐとき、消防士のお父さんから「警察官は一度、仕事に出ると生きて帰って来られないかもしれないので、下着だけはきれいなものを毎日つけさせて送り出しなさい。」と言われたと定年を迎えた夫に寄せた娘さんが書いた物を読ませてもらったことがあります。

 今日では、阪神大震災や東日本大震災が起こったことが嘘であるかのように日常は流れていって、また新たな災害であるコロナ禍の世の中となりました。

 東日本大震災のときに警察大学で同部屋だった者が、福島県警の機動隊長をされていて、電話をすることは憚られましたし、「がんばれ」とメールを送るのも違うような気がしたので、「必ず生き延びて帰ってください。」とだけメールで送りました。

 警察職員の仕事は「逃げること。」が出来ません。どのような状態であろうと「逃げ出すこと。」は出来ません。衆人環視の中で仕事をしていますし、怯めば懈怠、不作為ということで苦情や広聴という形で非難を浴びることにもなります。

 署長時代に、地域の若い警察官と面談をして、悩みは無いかと聞くと「傘をさしていたり、交通ルールを守っていない自転車を止めて指導すると乗っている中年女性からボケとかアホと言われる。」とぽつりと話してくれたときにには、本当に涙が出そうになりました。

 組織は使命感を求め、その使命感に裏打ちされた仕事が「ボケ」や「アホ」と返ってくるのはどうでしょうか。それだけの権限を持っているからこそ非難で返ってくるということは頭では分かっていても悲しくなってしまいます。

 先にも触れましたが、雑踏警備に従事していて「無事に家まで帰って欲しい。事故に遭わないで欲しい。」と思いながら、交通規制で注意を促すと雑踏から罵詈雑言が返ってきて、翌日から出勤出来なくなった警察職員もいます。

 仕事で命を取られることこそ悲しいものはないと思います。「殉職」であろうが、「自死」であろうが、「病死」であっても愛する人にとっては「死」であり、永遠の別れであることには間違いなく、その悲しみに変わりはありません。

 自宅から「行ってきます。」と出て行ったからには、「ただいま」と帰ってください。もちろん、警察職員が、本署から出て行ったからには、「お疲れ様でした。」と本署で迎えてもらってください。

 きっと、あなたのことを思っているいる人はたくさんいるはずです。怪我をしたり、事故を起こすことなく、無事に帰ってきて欲しいのです。

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