Eva(公益財団法人動物環境・福祉協会Eva)

やりきれない

刑事

 アイキャッチの画像は、先日の弁護士先生とは別の方からいただいた事務所開設のお祝いです。 

 北部署で刑事課長をしていた2年目の話しです。

 異動日の内示の日でした。いつも柔道をしたり、巡査会の飲み会に呼び出されては一緒に飲んでいた駐在所の警察官が相談があると刑事課を訪ねてきました。

 訪ねてきた警察官によると隣接する駐在所の管内には市役所助役の自宅があり、半年ほど前から深夜に玄関に小便をかけられたり、人糞があったり、毎日のように呼び鈴が鳴らされるというもので、助役や助役の家族から毎日のように「何とかしてくれ。」と言われ続けており、駐在所の奥さんまでノイローゼ気味になっているということでした。

 管轄の駐在所の警察官は、助役からの相談に基づき、早い段階で生活安全課長に相談してはいたのですが、「事件になるものではないので地域で解決してくれ。」と言われたとのことでした。

 なるほど助役の自宅は、道路から玄関までの囲繞地の区切りはなく、ちょっと聞いただけでは事件にならないような感じもしますが、明らかに幹部の指揮の不在には間違いありません。

 私は相談に来た駐在所の警察官に助役宅を管轄する駐在所の警察官を連れてくるようにお願いし、訪ねてきた両人に対して、「いつも一緒に飲んだりしているのになぜもっと早く俺のところに来なかったのか。」と叱りました。

 すると黙っている助役宅を管轄する駐在所の警察官に代わって、相談に来た駐在所の警察官が「こいつは生活安全の専務員が希望だったので。」と言いました。

 私は「俺が事件にしてやる。今日から3日間、内張り出来るところでビデオを回せ。玄関先に三和土があるから、そこにあがれば住居侵入でやろう。そこで用を足したなら現行犯逮捕しろ。呼び鈴をおしただけなら任意でやろう。」と二人の駐在所の警察官に下命したところ、管轄する駐在所の警察官は泣き崩れてしまいました。

 彼もまた奥さん同様にどうしようもなく追い詰めらていたのだと思います。

 相談されたこそ力を貸してやろう、知恵なら俺が出してやる、しかし、悔しい思いは自分で何とかしなければならないという気持ちでした。もちろん、刑事課員を使って事件をしても良かったのですが、それでは今までの駐在所の警察官の気持ちが無駄になると思ったのです。

 それと同時に幹部の不甲斐なさや組織として気づいてやれなかったという忸怩たる思いと閉塞した組織の中にいる自分自身が部下を傷つけてしまっているとう思いでいっぱいでした。

 彼らが張り込みして、一日目に犯人が呼び鈴を押したので、ビデオで撮影することに成功し、そのまま任意出頭という形で犯人を本署に引っ張ってきました。

 犯人の動機は自分の土地が整備計画に入っていなかったものの、補償が欲しいがために何度か自治体と交渉したのですが、当然のごとく補償が受けられることはなく、それを恨んでの犯行でした。

 今では警察安全相談というきめ細かい対応がなされているところです(これもややもすれば見逃してしまうものが隠れている。)が、当時はそういうものもなく、注意報告書どまりであったことから組織に決裁であがることもなく対応出来ていなかった一因だと思います。

 助役宅を管轄していた駐在所の警察官は、その翌年、生活安全適任者ではなく、刑事適任を受けて見事合格して、今では刑事部の幹部として頑張っています。

 いつも楽しく過ごせるわけではありませんし、しんどいことや泣きたいこともあると思います。でも一緒に仕事をしている人が信頼できる人なら、しんどいことも無きたくなることもいつかきっと楽しかった思い出に変わるのではないかと思います。

 悩みや自分ではどうしようもない思いを抱いている人がいたなら、きっとそばにあなたの信頼に応えてくれる人がいると思いますので相談してください。

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