もう40年ほど前の話しです。
当時、交番に勤務しながら夜学にも通っていたときで、今でもいろいろな人が交番を訪ねてくると思いますが、当時もいろんな人が交番にやってきました。
いつもいつも話しが一方通行で、分からないことを交番に言ってくる一人暮らしのおばあさんがいました。寂しいせいもあるのでしょうが、私の係も他の係同様に適当に話を合わせて早く帰ってもらうということをしていました。
ある日、そのおばあさんが私の当番日に訪ねてきて、「毎日、交番に来ているのに誰も話しを聞いてくれない。」と言い始めたのですが、何かしらいつもと違うような気がして耳を傾けることにしました。
よくよく聞いてみるとおばあさんが言うには「バスの中で落とした敬老乗車証を自宅に届けてくれた女性が帰ったあと、居間に置いていたカメラがなくなっていた。」といいうことでした。
いつものように被害妄想じゃないかと他の係はまともに話を聞いてなかったみたいでしたが、被害であるなら自宅の見分も必要なので、上司に断りを入れて、おばあさん宅で話しを再度、聞いてみることにしました。
おばあさんによるとバスに乗ろうとすると「危ないから支えましょう。」と40歳過ぎの女性に声を掛けられ、支えられてバスに乗り、その女性は先に降りて行ったが、おばあさんは目的地で降りようとしたところ、敬老乗車証がなくなっており、その後、自宅に敬老乗車証を届けてくれた女性も介護をしてくれた女性とのことでした。
この状況から考えると「介抱スリ」の手口で、金目の物が掏れなかったので、自宅を訪ねて、カメラを盗んだのではないかと思い、幸いにもカメラの固有番号が分かりましたので、被害届と調書をあげて、スリ常習者名簿の写真で面割を実施したところ、おばあさんは一人の女性を指さしました。
後日、カメラを質屋にいれていたことも判明し、そのスリの女性は通常逮捕されました。被害者であるおばあさんの話しは100の申告があれば、99が勘違いや思い込みから来るものであったのも確かでしたが、たった1つが本当であったという事例でもあり、経験もさせてもらいました。
聞き手が先入観にとらわれると真実を聴き取ることが出来ないということを学んだ事例でもあります。交番は本当に忙しい現場でもあり、次から次へと対応を求められる現場でもあります。忙しいからといっておざなりにするのではなく、応援を求めるなり、緊急でなければ、後刻、時間があるときに受けるなど聞き取る力を養っていく必要があります。



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