今日は「取調べ」を下命する捜査指揮官としての思いを記載してみたいと思いますが、これは私が行ってきたもので、他の方がそのような指揮をしているかは知りませんし、誰からか教わったというものでもありません。
私自身が取調べをする際にメモを取調室に持って入ることはしませんでしたので、取調べ当初から取調室にノートやメモを持っていく取調官はあまり信用しませんでした。
取調べ当初は、相手が「被疑者であるのか。そうではないのか。」「法を犯したのか、犯していないのか。」しかありませんから、「被疑者」であることを認めて、「法を犯したこと」を認めてから、「動機」や「背景」を追及することとなります。
ですので、当初の取調べにメモやノートは全く必要ありませんし、取調べは上司や下命されたものに対する「報告」や「復命」のために行うものではないということです。
被疑者の言い訳や話したことは、頭の中で整理して、矛盾点やおかしいと感じたことを追及していかなければなりません。被疑者が供述したことをメモやノートに記載していると被疑者から目を逸らしてしまいますし、記載するという間隙が生じてしまいます。検証や実況見分同様に五感をもって取調べをする必要があるからです。
被疑者は記憶に基づき話しているわけですから、その記憶をいちいちメモしている時点で、位負けというか、取調べになってはいないでしょうし、被疑者の面前で、汚い字や間違った字を書いていたりすると「こいつは大したことないな。」と被疑者になめられたり、気持ちの余裕を与えることにつながります。また。被疑者が虚偽の供述をしていたのなら「このまま通してやろう。」という気持ちを生じさせかねません。
一方で、取調べにあたる捜査官の精神的不安も非常に大きいものがあります。過去に被疑者から供述を取れなかったことで自殺した同僚もいます。
私は、一度、指名した取調官を供述が得られないからといって替えたことは一度もありません。取調官にいつも言っていたことは「しんどくなったら言えよ。いつでも俺が替わるから。」であり、実際に二度ほど変わったことがあります。
なぜ、そのような声掛けをしていたかというと「取調官を病気にしないため。」「自分自身が被疑者であるのか否かを確かめたいため。」「私が調べても供述が得られなかったら誰が調べても同じであると進言するため。」であり、そういう思いで取調官を指名していました。



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