Eva(公益財団法人動物環境・福祉協会Eva)

私はしない

組織

 辞める数年前の署長時代の話しです。

 警察内部で逮捕者が続出したことや非違事案の多発を受けて、組織に対する危機感からなのか首席監察官から「家族で良く話し合ってください。」と配偶者宛てに「家族への手紙」を所属長名で出すようにというメモが副署長宛てに来たことがありました。

 副署長から報告を受けたのですが「出さなくて良い。」と下命しました。首席監察官には「毎月の給与明細に各課持ち回りで近況を印刷して家族への便りとしていること。」「家族を職場に招いて夏祭りも催したこと。」「家族に餅を持って帰ってもらうように餅つき大会もすること。」を報告しておくように付言しておきました。

 副署長には、首席監察官から再度「本部長の意向だ。」と言われたと報告があったのですが、内心(たぶん口に出ていました。)では「本部長の意向であるなら本部長名で出したらよい。」と思っていました。

 前にも記載しましたが、組織が身上把握を徹底したり、高度な人事管理が求められるのは、個々の警察職員が人を殺傷出来る武器を携帯し、人を拘束するなど強大な権限を持っているからであり、健全な心身の状態で職務を遂行する必要があるからです。

 その身上把握をしたり、高度な人事管理を行うのは、組織の幹部であって、警察職員個々の家族ではありません。それを家族に委ねるということは自分の責任を放棄していることと同じであり、そのようなことをすること自体が恥だと思ったからこそ、署員に対して「家族への手紙」は送付しませんでした。

 陰口をたたくのは好きではありませんので、福利厚生会から出ていた郵送代についても、全額返金し、福利厚生会の会長である警務部長に電話で「あなたの貯金箱ではない。」と直接言いましたし、「家族と話しをする機会を設けるというであれば、その郵送代で饅頭を買って、奥さんにもって帰ってあげたほうがよほどましだ。」とも言いました。

 夫婦は相互扶助の関係であることは間違いありませんが、夫婦にはいろんな形があると思いますし、家族であってもそうだと思います。

 署では、全署員と一年に2回は面談をしており、障害を持つ子供さんを育てている家庭も知っていましたし、奥さんが仕事で悩んでいる家庭もあります。警察職員が扱っている悲惨な事件を奥さんに話すことは憚られるでしょうし、お互いが慮って生活しているのが普通だと思うのです。

 そのような家庭に組織がずかずかと入ってきて、何をしたいのでしょうか。夫婦はそのような手紙が送られて来なくても相互に気遣っているでしょうし、一所懸命に子供を育てたり、悩みを解決しようとしているに違いありません。

 父親が悪性腫瘍にり患して、それを看病している母親が精神的な病気になってしまい、弟が引きこもっているという女性警察官もいましたが、彼女はいつも笑顔を絶やさず、一所懸命に仕事をしている姿を見ているからこそ、「家族への手紙」など到底出せませんし、そのような発想をする組織がおかしいとは思わずにはいられませんでした。

 知己のJRに勤めていた役員と話す機会があった折り、「家族への手紙」の感想を聞いたところ、組織に逆らっている私に驚きながらも「国鉄末期と同じですね。」と呟かれていました。

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