Eva(公益財団法人動物環境・福祉協会Eva)

地面師

取調べ

 警察組織の全部門で勤務していた関係で、現職時代には交通部の送別会にも出席させていただいたことがあり、その席で先輩であるMさんを見送ったことがありました。

 奥さんは非常におきれいな方で、娘さんも女優かと見間違うような方であり、送別会では、Mさんを囲んで一緒に写真も撮っていただきました。

 Mさんは交通事故捜査の鬼と呼ばれるような方だったのですが、私に会うときはいつも「あのころが警察官として一番辛かった。」とこぼされると同時に「あれで力がつきました。」とも言われていました。

 というのもMさんは、私が署の刑事課長代理をしていたときに交通部から捜査研修ということで、一月あまり派遣されていたことがあり、詐欺事件の被害者から被疑者まで取調べを担当してもらったことがあったのですが、正直なところ、「鬼」とか少しかけ離れた捜査力でもありました。

 Mさんに下命した事件について少し触れたいと思います。

 刑事課長代理として赴任したときの引継ぎメモに「不動産業者が、同業者から土地を買ったのだけど手付金が足らない。数千万円を貸してくれないか。土地を転売出来たら返すと言われ、口約束で数千マ円を貸したが、相手と連絡が取れなくなった。」と書かれていました。

 貸金の証書もありませんし、不動産業者でもあり、現実の土地の取引話があって、途中で取引が潰れたのであれば、商取引の範疇を出ませんので、犯罪として立件するのは難しい事案であり、引継ぎの参考であるメモ(当時は、刑事相談簿等はありませんでした。)としているのは良く分かりました。

 土地を売買するかのように装って、現金などを詐取する犯罪は、いわゆる「地面師」という詐欺になります。立件が困難なものを立件するのが知能犯担当捜査員の真骨頂でもありますから、何としてやろうとも思いました。

 この事件を立件するためには、「取引話は嘘でした。最初からお金を騙し取るつもりでした。」ということを自供させることが最大のポイントとなり、その供述を客観的に裏付ける証拠を収集することが必要となってきます。

 被疑者は所在不明となっており、たとえ居場所が分かっていたとしても、任意で取調べても自供を得るということは困難であることは容易に分かることでした。

 被疑者は、騙し取ったお金はもうすでに使い果たしているでしょうし、どこかでこっそり働いているか、罪を重ねながら暮らしているかのどちらかしかありませんから、そのようなことを念頭に被疑者の足取りを手繰っていくと被疑者の犯行を思われるホテルでの無銭飲食に行き当たりました。

 所要の捜査を行うとともに、さらに未届けの無銭飲食事件を数件掘り起こして、無銭飲食で逮捕状取得のうえで、指名手配をしたところ、同じ署のパトカー乗務員が職務質問によって被疑者を発見してくれました。

 無銭飲食での起訴後に、前述のMさんに地面師の取調べをしてもらったのですが、他の捜査員に補充調書の下命が必要な取調べとなってしまいました。

 どんなに取調べがうまくても供述調書に出来なければ全く意味がありません。語彙や表現力はいうまでもなく、「内心」をどのように調書に記載するのかということが重要になってきます。

 続きます。

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