Eva(公益財団法人動物環境・福祉協会Eva)

上司Ⅱ

刑事

 血掌紋から被疑者が浮上し、やさぐれしていたにもかかわらず、他署から応援に来ていた捜査員が、被疑者の名前にピンと来て、被疑者に任意出頭をかけることに成功したのです。

 偶然に偶然が重なったのか、運が良かったのかは分かりませんが、被疑者は他府県に住んでいたにも関わらず、京都府下で、風俗嬢から金品を強奪していました。

 ところが、被害者となった風俗嬢が、二度目の被害に遭いそうになったときに、ケツ持ちをしていた暴力団員に連絡を取られたために、反対にボコボコにされてしまい、その被害を署に届け出たのですが、やさぐれしているので、署で仮眠をしているという情報を被疑者の名前にピンと来た捜査員がもたらしてくれたのです。

 任意出頭した被疑者は、真打ちの取調官に対して、犯行は素直に認めたものの、人を殺めたことに対する反省心は欠片もなく、関心事は「運転免許証を更新できるか否か。」ということでした。

 殺しの帳場を経験させてもらった後に捜査第二課に異動となり、一年後に警部補に昇任して、署の捜査係長となりました。

 夏になってから、屋外での変死を取り扱うこととなったのですが、外傷もなく、総合的に病死と判断しました。

 死体発見報告書を作成の上、状況と併せて、捜査第一課に報告したのですが、検視の調査官が臨場することもなく、日々が過ぎて行きました。

 ある日、検視の調査官付の方と話す機会があって、「あのときは大変やったんやで。」と聞くことになりました。

 前記の死体の検案については、検察官から調査官に「なぜ検察官を呼ばなかったのか。」とクレームが入って、何度か調査官が説明に行かれ、事なきを得たというものでした。もちろん、調査官からも調査官付からも再調査の下命はもとより、小言すらありませんでした。

 当時、調査官は、調査官付に対して「報告書を誰が作成したのかということが重要であり、〇〇(私の名前)が検視をして作成したのなら、それ以上のことは必要ない。」と言われたようでした。

 自分が作成者を見て、信用した以上、最後まで責任は自分にあり、自分で責任を取るという気概が受け取ることが出来るとともに「この人は絶対に裏切られない。」という思いが強くなりました。

 この調査官が、まさしく殺しの帳場の課長補佐であり、その帳場から転身して捜査にあたった母子殺人事件の被疑者を、当時、捜査共助が無かった国で訴追をさせた指揮官でもありました。

 今でも、過去でも、刑事として唯一、リスペクトしている上司です。

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